タンカについて


タンカとは?

タンカとは日本語で言えば仏画であり、掛け軸様式に表装された絵の総称です。
タンカの起源は、インドの布絵仏画(パタ)」が、ネパールあるいはシルクロード経由で、チベットに伝えられたと考えられています。タンカは基本的に顔料などの絵具を用いて描かれ、布で表装します。アップリケなどを使ったタンカなどもあります。チベットの場合、文化は宗教に密接に関連しているので、描かれるものは仏教の尊像が殆どです。

タンカに使用される布は、綿、絹などで、画布の布目を白土と膠(にかわ)で潰して製作します。日光などで乾燥させ、その後コップの底を使って(チベットでは石を使うこともあるとのこと)表面を滑らかにします。表面が滑らかでないと絵具がひび割れて、剥落してしまうことがあるからです。画布ができたら、それを木の枠にコットンの糸で張ります。

タンカは絵師が勝手に描くことは許されず、描かれる如来、菩薩などの尊像は厳格な規定により、その容姿、身体の色、持っている法具などが定められています。また描かれる尊格などによって、尊像の身体の各部分の比率が厳格に定められています。そのためタンカ絵師は比率に則った補助線(ティク)の引き方を学ぶ必要があります。これを習得することがタンカを描く上で大変重要になります。(タンカ製作の過程をご覧になると参考になります。)


タンカの流派:主に3つ 
●メンリ派(始祖のメンラトゥントゥプは聖像度量法(アイコノメトリ−)を大成したことで有名。)、ダライラマの宮廷絵師を多数輩出し、チベット仏教美術の主流を形成)
●キェンツェ派
●カルマ・カルディ派


タンカに描かれる尊格:
日本になじみのあるものとそうでないものがあります。

@  祖師―開祖や歴代ラマなど (例:グルリンポチェ)
A  守護尊(イダム)―チベット独自の範疇 (例:カーラチャクラ)
B  如来― (例:釈迦如来、大日如来等)
C  菩薩―(例:観音菩薩、文殊菩薩等)
D  女性尊―(例:ターラ菩薩等)
E  羅漢―(例:十八羅漢、日本の十六羅漢に相当)
F  護法尊―(例:弁財天等)

製作過程:補助線(ティク)を元に下絵を描きます。その後彩色していきます。山や雲など尊像の回りの部分から彩色していくことが多いようです。面相部分、特に眼晴は重要な部分とされ、開眼の儀礼まで完成させません。
伝統的な方法に則ると、裏面にオーム・アー・フームのマントラを書き、僧に読経してもらい、入魂致します。それぞれ身体・言葉・心を表わし、頭(みけん)・喉・心臓の部分に書きます。現在はタンカを芸術品またはインテリアなどとして求める方も少なくなく、購入される方が僧侶や瞑想目的の方とは限らないため、お店などで販売しているタンカは開眼供養はされていないことが多いようです。


また、タンカは一人の絵師だけで線描きから完成へと至るとは限りません。特に大きなものや日数を要するものは、複数の絵師の手によるようです。一般的に師匠クラスの絵師は弟子を何人か持っていて、その弟子達がある過程においては大いに師匠を手伝います。例えば師匠が線描きし、その上に色を塗ったりします。重要な部分は特に師にあたる絵師が仕上げます。特に壁画など大きなものになると当然一人で描くことはなく、大勢の絵師の手により、彩色されていきます


タンカはどういう時に必要となるかといえば、

すでにご説明致しましたが、タンカはチベット仏教と密接に関連していることから、チベット人がタンカを必要とするのは、僧侶であれば、修行などに使う為で、自分の師から与えられた尊像を想起させる為とのことです。また寺院などで特別に行われる法要などの時にも必要です。
一般のチベット人がタンカを必要とするのは、親類や縁者の49日の法要の時などです。占星術により告げられたタンカに描かれる尊像をタンカ絵師に伝え、描いてくれるよう依頼するそうです。描かれたタンカは一家の所有物となることもありますが、お寺に預けることも多いようです。お寺に預ければ、毎日必ず長時間お経を上げてもらえるというのが大きな理由のようです。

使う絵具は?:絵の具には、岩絵の具(岩を砕いたもの)を使います。が、天然顔料の入手が困難な時はしばしば化学顔料で代用されることもある。宝石類(ラピスラズリ、パール、トルコ石、珊瑚)や貝を砕いたもの、草木から採るもの等もある。中にはチベット医学でも使用されるものもあるそうです。


表装について:一般的に完成したタンカは表装されます。外側は紺、真中に黄色、内側は赤の錦布を使って表装されます。表装のほかに、いわゆるタンカを保護する為のカバーが掛けられています。その包布は外側は赤、内側が黄色の絹の布でできています。タンカを拝観しない時は、この布をおろして置き、拝観する際は「風抑え」といわれる紐で包布を巻き上げます(写真1)。ただ布を上にあげればいいというわけではないようで、私が巻き上げたら、「違う。」と直され「花を作るようにするんだ。」と注意されました(写真2)


続く


タンカに関する本を読んでみたい方に。
参考文献:「タンカの世界」 田中公明著、「日本人タンカ絵師の世界」 馬場崎研二、他